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ああ なんと寂しきことか

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「歳を取る」ということは 大方の場合 図々しくなるものだ。
その図々しさの大半は ややこしいことは面倒になり 人のことを考えるのも疲れる・・・ということらしい。
どうあれ 人は人なりに勝手な理解をするものだし だから マナーに反することでなければ 思いのまま喋り したいことをする。
--- 「マナーは自分」とばかり 勝手放題の人もいるようだが
特に 新たに人に好かれようと 努力し 外面はそこそことしても 内面を飾るようなこともない。
自身を飾りきれるものではないことを 充分承知しているし 何より それは 面倒で疲れることでもあるからだ。

一方、臆病にもなる。
何かにつけて 「歳の癖に」と 思われるからだ。

最近の私の例をひとつ紹介する。
初めて入った ある喫茶店でのことだ。
カウンターに座り コーヒーを一口すすったと同時に 40代であろう店主らしい女性から声をかけられた。
「あら 随分と可愛らしいノートですわね」
それは 読みかけの雑誌「Yom Yom」であった。
その存在を知らない人から見れば およそ雑誌らしからぬ表紙である。
全体がべったりと単色で 黒と白で大きくパンダのイラストが太筆で描いてある。
雑誌であることと その雑誌が短編集であり 新潮社から不定期に発行されていることなどを説明すると
「とっても若々しくていいですね」と返ってきた。
その顔は ニコニコではなくニカッとした感じだった。
自然に 心から出た笑みではなく 声に出ない言葉を心に納めた顔である。
「若々しくて」は本を見て 「ニカッ」は私をチラッと見て・・・ であった。

こうなると どうにも その全てが気になってくる。
「若々しくて」というのは 私が「若くない」ということで
「とっても」だから 「かけ離れて若くない」である。
つまり 「あなたはかなりの歳ね」といわれたようなものである。
気になった「ニカッ」は 「よくやるわねぇ」とか「歳を考えなよ」と言われているように受け取れる。
つまりは パンダと私は 不釣合いなのだ。
その不釣合いが気になった彼女は どうしても その疑問を解決したかった。
まず パンダの絵が気になった。ノートにしては 分厚い。絵は 強いインパクトで可愛い。
コーヒーを入れながら 彼女は 色々考えたが どうにもこれといった思い付きがない。
「そうだ それが何かだけでも聞いて 解決しよう」 「そうじゃないと このもやもやが尾を引いて 夜眠れなくなってしまう」 「できれば あのパンダと持ち主との関係も知りたい」
我慢できなくなった彼女は 私がコーヒーを一口呑むのを待って声をかけた。
   
他に客のいない店内で 独り座る私に サービスの会話を と思ったわけではない。
私に興味があって 話し掛けたわけでもない。
その証拠に 私の説明を聞いた彼女は 雑誌の中身には興味がないらしく
「あっ そうなんだ~」と言ったっきり 話を続ける素振りがなかったのである。

念のために言っておくが 高齢に見られることが 嫌なわけではない。
若く見られたいわけでもない。
私が若者であったなら 「それなあに~?」で始まったであろう 会話のきっかけが問題なのだ。

車を走らせていて 可愛い子を見つけ 「おお~ 可愛い子だなぁ~」と言うと 「いいかげんにしろよ」とよく言われる。
私は 純粋に素直に 思ったこと感じたことをそのままに 声にしたまでのことである。
ひどいのは「もう 歳なんだから~」とか「まだ そんなこと言ってるのか~!」だ。
「歳を取ったら 美しいものを美しいと言わず かわいいものをかわいいと声に出してはいけない」と言われているようで 大きく傷つくのだ。
美しいと感じる女性に「美しい」と言えば それが50才を過ぎた女性なら「冗談言わないで~」とかわされるし 若い女性なら睨まれる。
それは「ねぼけてんじゃないよこのジジイ」 「いい年こいて このアホ」なのだ。
「かわいいね」「素敵だよ」「好きだよ」なんて言ったものなら 当然「セクハラ」 明らかに「変体」扱いされてしまうだろう。
もちろん 「恋ごごろ」を外に出すことなど もってのほか ・・・。

年齢との釣合いを考えるとき 肉体と心のギャップに悩むこのごろである。
つまり 判断されるのは 心ではなく 姿かたちなのだ。

そう考えると 結局は 動かず話さず ただ歩き 眺め そして本を読み映画を観 TVを観 ラジオや音楽を聴き 黙って趣味らしいことに明け暮れるしかないのかもしれない。
会い話すとすれば 見るからに 同年輩かあるいはもっと高齢者を相手に 個人的な思い出話と旅行先の話 家族の話 食べ物の話 たわいない世間話と噂話に埋もれるしかない。

きょうも 我が家の前を とぼとぼと むっつりと 無表情にうつむいて 高齢者が通り過ぎて行く
---健康のための「散歩」というものらしい

ひとり そして また独り・・・。 ほら また独り・・・。 
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by jam909jam | 2008-02-18 09:28 | ◆独り言
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