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もう駄目だおじさん 春だよ~

まだ寒い2月の始め 決まって顔を出す オオイヌノフグリ。

今年この子を見たのは あちこちに梅の花が咲きだしたつい最近。

「新しい年が始まったよ~~」

「おお~~い みんな~ 春が来たよ~~」

随分昔から見ている気がしているし とっても日本的な感じがしていたけれど

これはヨーロッパ原産の帰化植物なんだってね^^
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私は 去年の11月から 夕食を届ける仕事を始めた。
お届けしているのは 現在 約20軒。
ゆっくり 道草をしながら約3時間。 急げば2時間で終わる。
40軒くらい受け持たないとアルバイトにもならないから 今のところ コーヒー代にもならないなぁ~ といった感じだが まあまあ気に入っている。

食事は 高齢者向きのご飯付きのものと ご飯は自分でという人のために栄養バランスをとるためのおかずだけの2種類。
糖尿病の気があるから 血圧が高いから 太り過ぎだから ・・・ 
奥さんが入院するからご主人のためにとか
妊娠中で主婦業の負担を軽くし ついでに偏ることのない栄養バランスの良い食事をという人
夫婦共稼ぎで夕食の支度が大変だから 基本的な食事を確保し 何かひとつふたつ作るくらいですませたい
二人だけれど1つ取って それだけで食卓がにぎやかになるから
ご主人の晩酌 摘みにいいから
・・・ 注文する人の事情は様々だが 基本的に高齢者(70半ば~80代)が多い。
変わったところでは(私の担当ではない) 会社の従業員の昼食に・・・というのもある。(これはいいアイディアだ)
不規則になりがち バランスの良い食事が大切な時期の上京している独り暮らしの学生にいいんじゃないかと思うのだが  今のところその需要は皆無である。
中には 一軒家に独り住まいの92歳の男性もいる。

< ちょっとしたエピソード >

この92歳の男性 去年奥様を亡くされ独りになったそうな。
ひとり息子は 家族と近く(電車でひと駅)に住んでいて 1日おきに顔を出してくれるから安心だという。
2月4日のお昼前に伺うと 玄関から部屋の中まで豆が散乱 丸い形が残っているのはごくわずか ほとんどが粉状態だった。
「昨日豆まきやって まだ掃除してないんだ すまんなぁ」
・・・ そうか 豆を踏みつぶしてたんだ。
「構いませんよ ゆっくりやってください」
「これでも結構やることがあって なかなか掃除ができないんだ」
「昨日は お孫さんとかいらして にぎやかだったんですね」
「いやいや 独りで豆撒いたんだ」
・・・独りでやったにしては 散乱している豆が多い。
私の見える範囲だけでも おそらく2・3合くらいの量だ。
「独りで撒いたんですか!?」
「・・・・・」
彼は 黙って私から視線を外しうつむいた。
「寒いから 身体気を付けてね。 火の元注意してね。 じゃまたね~!」
耳の遠い彼に 大声を上げ車に向かった。
フロントガラスの向こう 門のところに彼が立っている。
窓から手を振る。
彼は 胸のあたりまで 力無く手を挙げた。


80代中ごろのお婆さんは 美しい3階建の鉄筋の家に住んでいる。
緑に囲まれた静かな環境だが ちょっと坂があって 買い物にはちょっと億劫になりそうなところ。
白い猫が いつも門柱の上にシャキッと座って待っている。
決まって 私の足に体をこすりつけ 玄関の開くのを待ち ドアーが開くとゆっくりと家に入る。
外回りも玄関もいつもきれい。 男性用の黒の革靴と茶のスエード靴が揃えてある。
ある日 次の週の注文を受け集金をし うっかり品を置かないで帰りそうになった。
前の日の器の入った箱を引き取り 同じ箱に入った当日のものをお渡しすることになっている。
「ああ うっかり今日のを持って帰ってしまいそうになっちゃった。 すみません」
「あら~ 私も話に夢中で気付かなかったわ~」
「あるんですよ うっかりが。 先日 車に乗ってさてと思ったら お客さんがすごい勢いで走ってらして 『あんた 空の箱置いてったわよ~!』なんて大笑い・・・いや~ 参りました」
話しが終わるか終らないうちに 玄関に座っていたお婆さんは お腹を押さえ床に頭を付けて大笑い。
「お届けしたものをそのまままた持って帰っちゃうなんて ひどいですよね。ったくドジなんだから~」
・・・ お婆さんは まだ頭を挙げず笑い続けていた。
翌日 伺うと
「昨日はすみませんでした」と正座で頭を下げた。
「??」
「私ったら あんなに笑っちゃって 申し訳なくて電話しようかって思ったのよ」
「いえいえそんな・・・」
「ほんとにごめんなさいね。あんなに笑って失礼だったわね」
「そんな~ 別にかまいませんよ」
「あんなに笑ったの久しぶり 楽しかったわ~」
「そんなに ボクのドジがおかしかったですか」
「独りでいるとね 笑う事なんてないのよ。 ほんと久しぶりだったの 嬉しかったわ~」
「えっ!? お独り?」
「そうよ この家に私一人」
「そうでしたかぁ ・・・・」
「主人が亡くなってもう10年以上になるわ 息子が一人」
「その息子さんは?」
「近くにいて お嫁さんと孫2人で住んでるわ」
「じゃあ よくいらっしゃるんでしょ」
「来やしないわよ。お嫁さんの尻に敷かれて 来る時も内緒で来るのよ」
「・・・・・」
「正月だって ここへは来ないで お嫁さんの実家の九州に行って・・・」
「ありゃぁ~ そうですか~」


庭の広い1軒屋。 ほんのたまに奥さんの顔を見るが ほとんどご主人が出てくる。
「お元気ですか?」
「元気? 元気なんかないよ」
「どうかなさったんですか?」
「どうもこうも無いよ もう俺は駄目だ」
「何が駄目なの?」
「何もかも 俺の身体はもうぼろぼろ」
「そんなぁ~」
「ほんと 今日死ぬか 明日死ぬかの毎日だ」
「かんべんして下さいよ~~」

また次の日
「おっ! 散歩行って来たんですか? 今日は暖かいからね」
「ああ ちょっとな」
「何か楽しいことか いいもの見つけたとかあった?」
「そんなものないよ。 いや~ 俺はもう駄目だ」
「またまた・・・」
「いや ほんと 駄目なんだよ」
「かんべんして下さいよ 元気出して ネッ!」と手を出す。
一瞬目を見開き ニコッとする。
分厚い手だ。 暖かな手だ。 しっかり握手・・・。
「また明日ね 元気出してよ~」
「ああ あ・し・た・な」

また つい最近のある日
「元気? 今日の顔色いいよ~」
・・・ 黙って うつむき加減に顔を傾ける。
「今日も暖かいよ 散歩行ったの?」
「俺はもう駄目だ・・・」
「ったく~ またそれかよ~」
「いや ほんと駄目なんだ。 弁当も食いたくない」
「じゃ やめる?」
「弁当はいいけど あんたに会えなくなるのさびしいもんな~」
「ええっ!? ありがとさん」
ニッコリ顔が ちょっとうつむいて傾く。
手を出す。 暖かな厚ぼったい大きな手が出る。 いつもより力を入れて握手。
肩に手をやって「しっかり食べて元気出さなきゃ駄目だよ じゃ また明日!」

・・・ 庭に咲く紅白の梅の花。 誰が置いたのか門柱の傍らに黄色いチューリップの鉢。
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by jam909jam | 2011-02-25 02:27 | ◆独り言
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