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二子玉川でのいっぱいの珈琲

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 玉川高島屋のラジオコマーシャルを作っていた頃 「二子玉は大きく変貌しますよ」と聞いていた。もう30年近く前のことだ。
 それ以前にも、親しいイラストレーターが住んでいたこともあって、ちょくちょく足を運び、その度に高島屋周辺の路地にある小さなお店に何軒か入ったが、特別ひいきにするところもなかった。
 プジョーの自転車ショップや洒落たアウトドアー用品の店には毎回立ち寄ったが、多くは友人のマンションベランダから多摩川を望み、夕日の沈むのを眺め、富士山が見えたの見えないのと言いつつ珈琲を呑み、合間に仕事の打ち合わせをしたり、「何か面白いことやりたいなぁ~ こんなことどう? あんなことどう?」ととりとめのない話で過ごすのが常だった。


 成城学園近くのお店の常連さんたちと「これから鎌倉へ行こう」とか「プールに焼き鳥食べに行こう」とか「今晩は ○○さんの庭でバーベキューしよう」とか「これから箱根でマージャンしよう」とかその日の顔ぶれとなりゆきであれこれ遊んでいた時代、それはいつも泥んこのモスグリーンのクラウンクーペ(2ドア)に乗っていた頃だった。
 これといって人が集まらず、お店ががらんとしているとオーナーのお母さん(今は亡き大物役者婦人)が顔を出す。
 「ねえ ジュンちゃん 時間ある?」
 「あるような ないような」
 「ちょっと買い物付き合ってくれる?」
 「どこ?」
 「高島屋に決まってるでしょ」
 「そっか いいよ」
 「時間とらせないから・・・」
 「いつもそれだけど ちょっとが長いんだよな~」
 「付き合うの? それともなに?おばはんは駄目!」
 「はいはい 行きますです」
 駐車場で車の中をちょっときれいにしている私に、身支度を終えた彼女が現れ言う
 「その車で行く気!?」
 「当然!」
 「やめてよ~ そんな汚い車いやよ 家の車で行って!!」
彼女のお出かけは、箱根も鎌倉も必ずブルーのピカピカカマロ、そして運転手は私・・・となった。
二子玉に行く度、思い出す成城時代である。
フリーで結構忙しく仕事をしていたが、成城仲間は誰もが私を暇人と思っていたに違いない。

 お店がなくなって、運転手役も無罪放免となってから以来、二子玉へ足を運ぶことが少なくなっていた。
あれから何年経っただろう。
友人の学生と以前から気になっていた用賀の店に走り、昼食をとって、
「気になってる店と言えば 二子玉の河川敷にも前々から気になっている店があるんだよな・・・」
「屋号は?」
「そんなの知らないよ どこにあるかも解らないんだ。 まあとに角行ってみよう」
となった。
 二子玉から多摩堤通りに入って驚いた。
高層マンションが建ち、あちこちに新しいマンションや広い公園が造成中、道も以前の姿ではなく、どこもここも景色が大きく変わっていた。
昔からある桜の木も当然のように大きくなり、こんもりと青葉をたたえた枝を伸ばしていた。
「246と第3京浜の間のようですよ」
助手席でスマホをいじっていた若者が、それらしい店を見つけたようだ。
何回か、通りを行き来している私にマップを見せた。
それは、多摩堤通りより多摩川寄り、多摩川堤防に沿った細い土道だった。
「あそこか? テラスが見える」
「でも この先進入禁止になっていますねぇ~」
「だよな もう1本道があるのかな?」
戻りかけて、道端の桜の木に「氷」の旗が揺れているのを見つけ、車を停めた。
「おっ! こんなところにカフェだ」
周りにお店も無く、すぐ前は多摩川の堤防。
「チョイ寄ってみるか~」
氷の旗が揺れる桜の木の先に、打ちっぱなしのコンクリート肌、なんでもない3階建てのこじんまりしたビルの1階がガラス張りになっている。
外のテラスにテーブルが3つ、ガラス張りの店内から女性が2人こちらを見て何やら話している。
車の窓から「入っていい?」とジェスチャーする。
背い高のすらりとした女性が頭の上に両手を丸くした。
2台ほど置ける駐車場に車を入れ、テラスの席に腰を下ろした。


 エスプレッソを口にし、なかなかいい店じゃないかと一息。
桜の木の先、今来た土道の先は多摩川堤防。
かなりの距離に鉄柵が張ってある。
「堤防工事? 川の方には入れないの?」
「そうなんです。もうずっとこうなんです。工事もしていないの・・・」
「なにそれ どういうこと?」
「堤防の補修工事と今ある桜の木のところの道を拡張舗装するらしいんだけど・・・」
「らしい?」
「それで桜の木もなくなっちゃうし 第一この道は行き止まりなのになんで拡張舗装するのかって もう随分前から住民が反対運動してるのよ」
「この道を使う人が反対してるの?」
「そうなのよ なのに計画通り工事するって・・・。何だか訳わからない」
「変な話だなぁ~ 道幅広くして舗装して 桜の木も伐採 しかも行き止まりの道 車は充分通れる 住民はこのままでいいって言ってんだろ?」
「そう そうなのよ 訳わからないでしょ」
繰り返し変な話を確認する。

 反対岸は川崎市
川崎市は2008年「川崎市みどりの基本計画」を発表。
以来、3年ごとに短期目標を設定し、様々なみどりの環境づくりを実施している。
その中のひとつ「多摩川の保全・活用に関する施策」とし多摩川堤防が大きく変貌し続けている。
しかし このような計画は、対岸の東京都などとの調整をしているのだろうか?
川崎側から見た東京側の桜。 それがなくなったら川崎住民の私も寂しい。

 楽しみ方の多様化に反して、整備はどこも同じ感じがする。
一体整備とは何なのだろう?
利便性も多様であることを知ってほしい。
合わせて、多様な美のあることも考えてほしい。
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by jam909jam | 2012-07-21 20:04 | ◆独り言
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