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紙風船

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よく通る道だ。
住宅街にポツンとあるその古ぼけた店の前には
飲み物とたばこの自動販売機が4台並んでいる。
坂道のY字路にあるそのお店 車が止めにくいこともあって
自動販売機の飲み物すら買ったことがない。
時々 店のオーナーと思われるおばあさんが 店の前で立ち話をしているのを 横目で見ながら通り過ぎていた。


ある日 どうにもタバコが欲しくて お店から少し離れたところに車を停め
カードのないボクはお店に入った。
誰もいない。
「こんにちは~!! こんにちは~~!!」
のっそり出てきたのは 大柄で頑固そうなおじいさんだった。
無言である。
「スピリットの黄色ありますか?」
「スピット? なんだそれ・・・」
「スピリットです。タバコなんですけど・・・」
「ああ 家は この辺の人が吸わないタバコは置いてないんだ」
じゃあ ・・・ とお店を出るのがいつものボクだが
なんだかそのまま背を向ける雰囲気ではなかった。

ちょっと店内を見渡した。
店の中は ケースに入ったタバコの他に
駄菓子がいろいろ 所狭しと並んでいる。 (よく整頓されていた)
ガラスの引き戸の古ぼけた棚には 剣玉 ビー玉 ビニールの縄跳び 鋳物のコマなどなど
昔懐かしい子どもの玩具が雑然と詰まっていた。
しかし 駄菓子と違って こちらはどれもうっすら埃に包まれている感じだった。
(長い間売れ残っているのだろう)
その空間は 1950年代にタイムスリップの世界だった。

「おお! 紙風船があるねぇ~」
「ああ」
ぶっきらぼうな返事が返ってきた。
「いくら?」
「何が!」
「この紙風船・・・」
「そこに書いてないか?」
「よく見えないんだけど」 (どこにもそれらしい数字は書いてなかった)
「ばあさん! 風船はいくらだっ!」
奥に声をかける。
太く とてつもなく大きな声だ。
ちょっと背の曲がった小柄なおばあさんが やはりのっそりと出てきた。

「いらっしゃいませ。 風船ですか? ひとつ40円です」
おじいさんと違って 静かで丁寧でゆっくりした口調だった。
・・・ いつも外で立ち話をしているおばあさんだ。
「5つ頂戴!」
「お孫さんにですか?」
「いや~ ボクが欲しいんです」
「あらら そうですか」とニッコリ なんともかわいらしいその笑顔にホッと和んだ。

下がガラスの障子戸が開け放された奥には
ほとんど日が差し込むこともなさそうな薄暗い部屋があり
やぐらこたつの上に 木製のお盆に魔法瓶とお茶のセットが置いてある。
こたつ布団を開けたら 炭火があっても納得する感じだが まさかそんなことはないだろう。

それから ちょくちょく紙風船を買いに立ち寄ることが多くなった。
が まだスピリットは無い。

紙風船は 家と車にいつもあって しっかりあいさつの出来るかわいい子にあげることにしている。
ちょっとしたサンタ気分で・・・・。
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by jam909jam | 2013-03-12 00:53 | ◆独り言
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